熊野(前編)

下げ止まり気味ではありますが、コロナ禍も落ち着く様子を見せてきました。

 

今回は拠点の津から遠出をします。行先は熊野。

 

三重県南部の東紀州から和歌山県東部一帯はかつて「熊野」とされていました。正式な国名ではないのですが、新宮市にある熊野本宮大社に向けて、古来都から多くの人が巡礼してきました。

 

京から最も使われたのは、大阪経由で和歌山~高野山を経て熊野に至る道筋でした。

 

一方、東海道で関へ出て伊勢別街道で、あるいは大阪から美杉を抜ける伊勢本街道で松阪から田丸(玉城町)へ行き、そこから南下するルートもありました。

 

この道が熊野古道伊勢路です。旧伊勢国から紀州に入る始神(はじかみ)峠、海山町から尾鷲市に入る馬越(まごせ)峠など、難渋する峠も多くあります。

 

尾鷲市を出ると最大の難所と呼ばれる八鬼山(やきやま)、それを越えて、またいくつかの峠を越えると熊野市に入ります。

 

写真1~3は八鬼山の手前、尾鷲市にある県営熊野古道センターです。

入場無料で、熊野古道の歴史など多くの資料が揃っています。

 

写真1は熊野古道センターから見た尾鷲市内。向かいの山は天狗倉山(てんぐらさん)。

 

この山裾が馬越峠です。なお、見えている高い塔のようなものは、火力発電所の煙突ですが、残念ながら昨年解体されました。

 

写真4

熊野市の入り口にあるのが鬼が城(写真4)。熊野灘に面する奇岩です。

 

こちらも入場無料で、入り口には地元の名物が揃った土産店もあります。

 

紀勢道が熊野まで全通したので、紀州へ行くのもずいぶん便利になりました。しかも紀勢道は紀伊長島から先は無料です。

 

津ICから尾鷲北ICまで1時間余り、熊野まであと20分余りで行けます。

 

高速道路がなかった時代は国道42号線で荷阪峠、尾鷲峠、矢ノ川(やのこ)峠、二木坂を経てようやく熊野へたどり着くまで、津から3時間半はかかったことを思うと、本当に便利になりました。

 

とはいえ、紀勢道はトンネルが多く、一部は海岸べりを走る国道42号線に比べると車窓の楽しみは少なくなりました。

 

津から熊野まで140km程度。大阪、神戸や京都より遠い県内。一度出かけてみませんか。

 

文・写真/ふるさと通信員・テツじゃ